ノーベル平和賞授賞式2024年12月11日

ノーベル平和賞授賞式
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中熙巳代表委員(92)が、ノーベル平和賞授賞式で日本政府が原爆被害に対する国家賠償を拒み続けていると発言し、波紋を広げている。田中氏は平成6年に制定された被爆者援護法に触れつつ、何十万という死者への補償がなく、日本政府は国家補償を拒否し続けていると指摘。スピーチの中で、放射線被害に限定した対応のみが続けられている現状を強調した。田中氏は「もう1度繰り返します」と述べ、原爆で亡くなった死者への償いが行われていない事実を強調し、国際社会に訴えたという。ロシアがウクライナ侵略での脅しとして戦術核使用を明言する中での今回の被団協の平和賞受賞は大きな意味がある。特に中距離核ミサイル使用の危機が懸念されるヨーロッパでは大歓迎だと思う。核弾頭こそ搭載しなかったものの先月のロシアの中距離ミサイルによるウクライナ攻撃はヨーロッパ全土を震撼させたからだ。核使用に勝者なしという被団協の発言はその通りだが、核を持たぬ国は核保有国より核兵器の最初の的になる可能性は高い。我が国においては中露と北朝鮮の中距離核ミサイルの標的となっている。

オバマ政権時の新START条約で、米の中距離核ミサイルは気前よく廃棄されたが、約束を守らぬロシアと条約にすら入らない中国は熱心に使いやすい戦術核ミサイルを開発し周辺諸国の脅威となっている。ノーベル平和賞を得たオバマがプラハで演説した「私たちは(核廃絶)できる」の「私たち」の中に独裁者が入るはずもなかった。核廃絶運動は核持たぬ国を脅す独裁国家に利用されているのが現実だ。核廃絶運動で核を持つ独裁国家こそ大きな障害だと言及し対処しない限り、民主主義国だけの核廃絶運動は戦争抑止の均衡を崩すことにもつながりかねない。今回の受賞スピーチでは、日本政府が死者も含めた全被爆者への賠償がないと糾弾された。民間人に原爆を投下した国際法違反のアメリカに賠償を求めるなら理解できるが、自国政府に賠償責任を問うのは筋が通らない。被爆関係者の苦しみを癒す責任が政府にもあることは理解できるにしても、民間人が戦争被害を受けたのは被爆者だけではない。前半の被爆体験を語ったスピーチが素晴らしかっただけに、独裁国家の危険には言及せず、自国政府の賠償を強調した下りが残念だった。
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