年金改革法案 ― 2025年03月11日

政府が提出を予定している年金改革法案の主な改正点は、「在職老齢年金制度」の見直しである。現在、65歳以上の厚生年金受給者は賃金と年金の合計が月50万円を超えると年金が減額されるが、2026年度からこの基準が62万円に引き上げられる。これにより、高齢者の就労意欲を高め、労働力不足の解消につなげる狙いがある。しかし、実際の効果については不透明であり、所得の高い層の年金給付への影響も指摘されている。また、年金の給付額が増える分、その財源確保のために2027年9月から年収798万円以上の会社員の厚生年金保険料の上限が引き上げられる。これにより一部の現役世代の負担が増加し、不満の声も上がっている。さらに、パート社員の厚生年金加入を促すため、企業規模要件の緩和や年収要件の廃止といった「年収の壁」対策も進められるが、企業の負担増が課題となっている。もう一つの検討事項として、厚生年金の積立金の一部を基礎年金の財源に回し、将来の基礎年金給付を底上げする案もあった。しかし、厚生年金加入者の給付減額や国庫負担の増加に対する懸念から、実施は2029年の財政検証後に再検討されることとなった。これは事実上の先送りであり、年金制度の将来に対する不安を残す結果となっている。公的年金制度は5年に一度財政検証が行われる仕組みであり、将来の収支バランスを確認した上で必要な見直しが実施される。そのため、今回の見直し自体は制度に沿ったものだが、問題は内容に明確な制限がなく、政権の意向によって大きく変わる可能性があることだ。現在、自公政権が少数与党であることから、法案提出が遅れており、4か月後の参議院選挙を控えた政治情勢も影響している。
こうした状況の中で、メディアによる誤った情報の拡散もあり、国民の間に混乱が生じている。しかし、日本の年金制度は国際的に見てもよく設計されていることは確かだ。特に2004年の年金改革では、①厚生年金保険料率を段階的に引き上げ、18.3%で固定、②マクロ経済スライドの導入による給付額調整、③基礎年金の国庫負担割合を1/2に引き上げ、④5年ごとの財政検証の義務化など、持続可能性を強化するための重要な措置が取られた。この結果、年金財政のバランスは一定の安定を維持している。また、「自分の納めた年金が高齢者よりも少なくしか返ってこない」という批判もあるが、公的年金は保険であり貯蓄ではない。日本の年金は「賦課方式」を採用しており、現役世代が納めた保険料をその時点の高齢者に給付する仕組みである。そのため、掛け金に対して受給額が少ないと感じる現役世代もいるが、これは制度上当然のことであり、不公平とは言えない。そもそも民間の養老保険でも、支払った保険料の2倍が確実に受け取れる仕組みは低金利の時代ではまず存在しない。今回の改正案では、65歳以上の就労者への減額基準の緩和、パート労働者の厚生年金加入拡大、高所得者(月収65万円→75万円)の保険料率平等化などが含まれているが、大きな問題とは言えないだろう。ただし、基礎年金の給付を増やすために厚生年金の積立金を流用する案は、制度の根幹を揺るがすものであり、見送りとなったのは妥当といえる。今後の年金改革は、正しい制度理解のもと、冷静な議論が求められる。ただ、年金などは統計値や金額が明確なものなので、AIに提案させた方がつまらぬ駆け引きや政局に関係なく提案できるような気もする。
こうした状況の中で、メディアによる誤った情報の拡散もあり、国民の間に混乱が生じている。しかし、日本の年金制度は国際的に見てもよく設計されていることは確かだ。特に2004年の年金改革では、①厚生年金保険料率を段階的に引き上げ、18.3%で固定、②マクロ経済スライドの導入による給付額調整、③基礎年金の国庫負担割合を1/2に引き上げ、④5年ごとの財政検証の義務化など、持続可能性を強化するための重要な措置が取られた。この結果、年金財政のバランスは一定の安定を維持している。また、「自分の納めた年金が高齢者よりも少なくしか返ってこない」という批判もあるが、公的年金は保険であり貯蓄ではない。日本の年金は「賦課方式」を採用しており、現役世代が納めた保険料をその時点の高齢者に給付する仕組みである。そのため、掛け金に対して受給額が少ないと感じる現役世代もいるが、これは制度上当然のことであり、不公平とは言えない。そもそも民間の養老保険でも、支払った保険料の2倍が確実に受け取れる仕組みは低金利の時代ではまず存在しない。今回の改正案では、65歳以上の就労者への減額基準の緩和、パート労働者の厚生年金加入拡大、高所得者(月収65万円→75万円)の保険料率平等化などが含まれているが、大きな問題とは言えないだろう。ただし、基礎年金の給付を増やすために厚生年金の積立金を流用する案は、制度の根幹を揺るがすものであり、見送りとなったのは妥当といえる。今後の年金改革は、正しい制度理解のもと、冷静な議論が求められる。ただ、年金などは統計値や金額が明確なものなので、AIに提案させた方がつまらぬ駆け引きや政局に関係なく提案できるような気もする。