三井住友NZBA離脱2025年03月06日

三井住友NZBA離脱
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、脱炭素社会の実現に向けた国際的な金融機関の枠組み「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」からの離脱を決定した。NZBAは2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指す取り組みで、現在44カ国134の金融機関が加盟している。邦銀では三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャル・グループなどが参加しており、SMFGの離脱は日本の金融機関として初の事例となる。SMFGは、これまで気候変動への取り組みとして社内体制の整備や高度化を進めてきたと説明し、NZBAに加盟せずとも独自の方法でネットゼロの目標達成が可能と判断したことを理由に挙げている。米国では、トランプ前大統領の就任前後からゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの大手金融機関がNZBAから離脱する動きが相次いでいる。背景には、共和党の一部政治家がNZBAの方針が化石燃料企業への融資削減につながる場合、反トラスト法(独占禁止法)に抵触する可能性を指摘していることがある。今後、SMFGの決定が他の邦銀に影響を与え、NZBAからの離脱が広がる可能性があるとみられている。NZBAの方針により、日本の化石燃料新技術の分野は資金調達の制約を受けてきた。特に効率的な化石燃料利用技術や炭素回収・貯留(CCS)の研究開発において、融資制限が商業化の遅れを招き、日本の化石燃料新技術の国際的競争力が低下するとも言われてきた。

効率的な化石燃料利用技術とは、化石燃料のエネルギー効率を向上させつつ、環境負荷を低減することを目的とする。具体例としては、高効率火力発電、クリーンコール技術、低品位炭や廃棄物を活用する技術がある。これらの技術は、化石燃料をより持続可能に利用するための重要な手段であり、温室効果ガス削減やエネルギー効率向上に寄与する。しかし、脱炭素運動の流れの中で、石炭火力などの開発や海外展開を促進するための融資はNZBAの方針により抑制されてきた。建設や運用に高額な資金投入が必要な再生可能エネルギーよりも安価に発電できる火力発電技術は、発展途上国にとって不可欠である。また、放射性廃棄物の最終処理手段を持たない日本にとっても、この技術は重要な役割を果たす。日本の火力発電所は、NZBAの融資制限の影響で新規設備投資が困難となり、古い設備のまま稼働を続けている。これは、燃費の悪いかつてのアメリカ製自動車のような状況である。電気自動車(EV)志向が早すぎるとの声がある中で、日本のハイブリッド車が再評価されていることからもわかるように、発電もベストミックスを選択すべきである。何もかもを一つに絞り込む動きには必ずリスクが伴う。バランスをとりながら一歩ずつ積み重ねていくことこそが、技術革新を支える金融と行政の役割だと思う。

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