シサム2024年09月19日

シサム
アイヌと和人の歴史的な関係を描いた人間ドラマ.。かつて「蝦夷地」と呼ばれていた現在の北海道が舞台。松前藩がアイヌとの交易を行う中で起こった対立を描いた映画。撮影は、アイヌと和人が共生してきた歴史を持つ北海道釧路・白糠町で行われ、アイヌの伝統的生活空間「イオル」(動物を獲ったり山菜を採る場所)を反映した多くのシーンが収められている。主演は、父は佐藤浩市、祖父は三國連太郎の世襲俳優3代目の寛一郎。共演者として三浦貴大、和田正人、坂東龍汰などが顔を揃える。脚本は「結婚できない男」や朝ドラ「梅ちゃん先生」など手掛けた尾崎将也が担当、監督は「タイムスクープハンター(NHK)」などマルチに活躍する中尾浩之が務めている。主人公は兄の仇を討つため、蝦夷の奥地に足を踏み入れる。しかし逆に仇に倒され、傷を負った主人公はアイヌに助けられ、村で傷を癒す。アイヌの人々と暮らす中で、主人公は次第にアイヌの視点から松前藩を見始める。そして、仇の正体が松前藩の不正を調査していた幕府の隠密であったことを知る。主人公は隠密と行動を共にするが、時すでに遅く、アイヌの暴動を鎮圧しようとする松前藩の手によって隠密は惨殺される。不条理に屈することなく、主人公は和人の不正を記録し、それを後世に伝えようと決意する。

導入部分が「イオル」(動物を獲ったり山菜を採る場所)の描写が間延びして退屈だが、後半の戦闘シーンはアイヌの弓が観客席に飛んでくるような映像で迫力があった。アイヌの村で暮らす最初の場面はアイヌ語会話でシーンが進み、後半字幕が出てくるという主人公のアイヌへの理解度を観客にも味合わせようという趣向だがいらぬお世話に感じた。途中までは和製ダンスウィズウルブスかと思いきや、寛一郎はケビン・コスナーのようにインデアン化はせず、史実を残す物書きになっていくというのがモヤモヤする。アイヌ人の祖先は、和人と同じく縄文人と弥生系渡来人の混血であり、さらにオホーツク沿岸の住民との遺伝子交流もあった。最新のDNA研究によれば、アイヌ人は琉球人と遺伝的に最も近く、本土の日本人とも関連があることが示されている。この研究により、日本列島の人々の遺伝的多様性が明らかになり、日本人が単一民族ではないのと同様に、アイヌも単一の民族ではない。それにもかかわらず、アイヌ民族を「先住民族」と位置づけたアイヌ新法には、過度なポリコレの気配が強く感じられる。アイヌ「民族」保護団体の公金チューチューかも知れぬと構えて見たが、描写を見る限りは真っ当に制作されているので良かった良かった。
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